8. 暗闇を照らす希望の光

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『……月姫……』 『月姫、泣かないで』 声……? 誰じゃ。 我が名を呼ぶ者は、 名を紡がれた方へと意識を集中していく。 この場所は……僻野ノ涯……。 私が在るべき場所は変わらない。 『月姫……ほらっ私はここだよ。  気が付いて……』 相変わらず我名を紡ぎ続ける優しい声がこだまする。 外に広げた意識を内なる潜在意識へと切り替える。 私の記憶が一つまた一つと消えて薄くなったからこそ、 その記憶の壁を越えて届けられた優しい声色。 『……月姫……』 冷たく凍りついた感覚のない世界に、 柔らかなに降り注ぐ光。 「誰じゃ」 私の呼びかけに私の名を呼び続ける少女は、 にっこりと微笑んで私の前に姿を見せた。 「深優姫。  月姫……貴方に逢いたかったの……」 ……深優姫……。 この体の持つ名……か……。 私の意識が、この体を乗っ取る前に、 この世に生を受けるはずたっだ穢れを知らない純白の魂。 ……そうか……。 私の罪は、ここにもあったのだな……。 我が想いを成就させんがために、 深優姫の魂を長きに渡り暗闇の畔に閉じ込め続けた……。
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