9.火の加護が満ちる夜

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……宝さま……。 笑みを携えて優しく微笑む桜瑛に微笑み返しながら、 紡ぎ返そうとするものの体は…… 正直なもので僅かに体がピクリと萎縮する。 「……桜瑛……。  私は……宝さまに……宝さまに手をかけた……。  愛すべき愛しいものに……。  カムナに手を染めた私を宝さまは許すまい。  ……私は……」 その名に怯える様に自らの過ちを悔いる様に、 体は震え続け涙が止まらなく。 小さく肩を震わせながら声を殺して泣き続ける私を、 桜瑛が優しく包み込んだ。 「……大丈夫ですわ……。  桜瑛がお傍におります。  私が…… 貴女を守ります。  私が未来を切り開きます。  だからどうか姫様も、泣かないでくださいませ。  桜瑛の記憶の中にある緋姫の時代の、  その清らかな御心と深い慈しみで真っ暗な暗闇を  照らし続けてくださいませ。  その光が私と神威が辿り着く道を指し示す道標となりましょう。  姫様……改めてお願いいたします。  どうぞ……私に焔龍朱瑛の加護を……。  姫様のお力をお貸しいただくことは叶いませんか?  三人で歩む未来……朱瑛の加護の元、切り開きとうございます」 朱瑛か……。 桜瑛が紡ぎだした名前。 私は……カムナの闇によってご神体をも傷つけた。 再び、このように私が朱瑛と絆を 取り戻すことが出来るであろうか?
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