地獄の終焉

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「ま、正樹!」 聞き覚えのある声。 ここはいったい……。 ぼやけた視界に白い天井が映った。 「正樹、分かる? お母さんよ」 「おか……母さん? 母さんが何でここに? え? 何だ? どういうこと?」 「未菜、すぐに先生を呼んで来て」 未菜……。姉ちゃんもいるのか。 正樹は夢なのか現実なのか分からないまま、遠くに母の声を聞いていた。 「お母さん、ナースコールだよ」 姉ちゃんの声が聞こえる。 「はい、どうしました?」 今度は聴き慣れない女性の声がした。 「弟が目を覚ましました」 「えっ、は、はい。すぐに行きます」 弟が目を……。ということは、俺は眠っていたということか……。 そのとき万里子の顔が浮かんだ。 「あっ」 正樹の口から声が漏れた。 「正樹!」 母が手を握って来る。 暖かい手だ。 いや、そんなことより万里子だ。万里子はどうなったのか? まさか井上翔馬に殺されたりしていないだろうな。 「法堂さん、大丈夫ですか」 部屋の外から女性が入って話しかけて来たので、万里子への想いはいったん中断された。
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