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しばらくジッとしていると、揺れが収まった。
「おい! 誰か!」
斜面の上に向かって叫ぶ。
「井上くん! 大丈夫?」
すぐに上から香里が聞いてきた。
「俺は大丈夫なんだけど、旬が気を失っていて、動かせそうにないんだ。誰か呼んできてくれないか」
「えっ、分かった」
「あっ、ロープと救助用のソリみたいなのがあれば、それも一緒にって頼んでくれ」
「うん。すぐに行ってくるから」
「ああ、急いで」
「分かった」
香里の姿が消える。
翔馬はすぐに旬の前にしゃがんだ。
「旬、大丈夫か? しっかりしろ」
身体を揺するけど、旬は動かない。
もしかして死んでいるのか?
翔馬は手袋を外すと、旬の顔を触った。
まだ暖かい。脈を取ろうと首筋を抑える。
トクトクと指先に感触があった。
どうやら気を失っているだけのようだ。
翔馬はホッと息を吐き出した。
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