246人が本棚に入れています
本棚に追加
さっきまではたくさんの人がいたのに、地震が収まると一斉に麓に降りてしまい今は朋佳と二人だけだ。
「行こう」
香里は朋佳に向かって声をかけた。
「うん」
朋佳が頷いて、二人で麓を目指して滑りだしたのだが、まだ教えてもらう前だったこともあって、少し滑っては転んでの繰り返しで、なかなか先に進めない。
早く助けてあげたいのに……。
それにしても、こんなことってあるのだろうか。
ずっと良いなぁと思っていた、隣のクラスの井上翔馬。
ただ何となく良いなぁと思っていた彼が、スノーボードで滑走する姿を見て、カッコイイと思った。
一気に大好きになって、勇気を振り絞ってコーチを頼んだら、快く引き受けてくれて、一気に距離を縮めるチャンスだったのに、選りにも選ってこんな時に、まさかの大地震。
そのときまた大きな余震で地面が揺れる。
「きゃぁああ」
朋佳が悲鳴を上げて、その場にしゃがみ込んだ。
香里も怖くてしゃがみ込んだけど、怖すぎて悲鳴は出なかった。
最初のコメントを投稿しよう!