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「もう! 何なのよ。いったい!」
余震が収まると、朋佳がキレ気味に叫んだ。
「とにかく早く降りよう」
「分かってるよ」
朋佳はさらにキレ気味に言うと、起き上がってまた滑り始める。
香里もすぐに後に続いた。
「おーーーーい! 大丈夫かーーー!」
何度も転びながら下っていると、麓に集まっている人の中から、引率の学年主任、小見山修の声が聞こえた。
「先生! 大変です!」
香里はまだ距離が遠くて判別出来ない、小見山と思われる男に向かって、大声で叫んだ。
「何があった!」
「上で井上くんの友達が、雪崩に巻き込まれました」
「何だと!」
「それは誰だ!」
「名前……。誰だっけ?」
朋佳が香里に聞いた。
「えっと……」
井上翔馬はもちろん知っているが、いつも一緒にいるあの人が、何ていう名前なのか知らない。
「すみません。名前は分かりません!」
香里は小見山に向かってそう叫んだ。
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