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「法堂くん?」
突然正樹が倒れたから、万里子は呆然と正樹を見下ろした。
「法堂くん?」
正樹が倒れている。
え? 何で?
視線を上げた先に、刀を握りしめて立っている井上翔馬の姿があった。
「ふざけんなよ」
「え……?」
「朋佳が死んだって言うのに、何でオマエらだけ生き残ってキスなんかしてやがるんだよ」
「そ……だって……」
一瞬理解が出来なくて、頭が回らない。
「ふざけるなよ。オマエらも殺してやる!」
翔馬が刀を振り上げた。
「いやぁあああ」
万里子は恐怖で声を上げる。
背中の痛みに耐えながら、正樹は何とかして万里子を助けたいと思った。
「止めろ!」
翔馬が刀を振り上げて、万里子に襲い掛かった瞬間、倒れている正樹は必死で足を出す。
「うわっ」
翔馬はその足に足を取られ、そのまま前に倒れた。
万里子は自分に向かって倒れて来る翔馬の身体を、すんでのところで交わす。
翔馬の手から、刀が離れた。
「戸田さん……」
万里子の無事だけを祈りながら、正樹はそのまま意識を失った。
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