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「何?」
ほとんど妹以外の女の子と話をしたことがないから、思わず声が裏返りかける。
「井上くんって、すごくスノボ上手いよね」
可愛い方の下村朋佳が少しはにかんで微笑だ。
「えっ、いや、そんなことはないけど、毎年うちの親父に連れて行ってもらってるから、普通に滑れるくらいかな」
「へぇ、そうなんだ。あのさぁ、迷惑じゃなかったら私たちに教えてもらえないかと思って」
思わず大声で「万歳」と叫び出したいような展開。が、しかし、ここで冷静さを保たなければならない。
「ああ、全然いいよ」
思い切りクールを装って答えた。
「本当に!? やった!」
朋佳は一緒にいる大寺香里に向かって微笑んだ。
「じゃあリフトで上に上がろうか」
これは願ってもないチャンスである。
去年と一昨年、修学旅行で問題を起こしてくれた先輩に感謝感謝だ。
振り返って先にリフトに向かいながら、翔馬は頬が緩むのを抑えられなかった。
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