246人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし案の定、勘違いであったことは、殊の外早く分かってしまった。
「何よ。分かってるってば、盗るわけないでしょ。アンタに協力して誘ってあげてるのに」
香里が肘で朋佳を突き、それに対して朋佳が、こっちにまで聞こえる声で言い放ったのだ。
これって恋愛未経験の翔馬にだって、香里が自分に好意を持っていて、朋佳が香里のために自分にスノボのコーチを頼んだってことが分かる。
「あの……。そろそろ始めようか」
ガッカリ感が大きすぎて、何だかいたたまれなくなってしまった。
「はい。お願いします。ほら、ちゃんと前に出て教えてもらいなよ」
朋佳が香里の身体を押す。
「分かってるってば」
香里はもじもじしながら朋佳に文句を言った。
「じゃあまずは正しい転び方からね」
「えっ、転び方?」
「そうそう。それが一番大事。柔道の受け身と一緒で、ケガをしない転び方をマスターしないとね」
「はい」
翔馬としては掴みのジョークだったのだが、香里は真剣な顔で頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!