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足跡が近づいてくる。
ダメだ。殺される。お母さん助けて。
亜須香の前で足音が止まった。
イヤだ。死にたくない。
祈る亜須香の頭の上で、グチュグチュという嫌な音が聞こえ、一層血の匂いが増して、吐き気を催した。
もちろんここからでは見えないけど、あのバケモノが美羽の身体を切り刻んで、内臓を食べているような気がする。
怖い。怖い。怖い。早くここからいなくなってほしい。
発狂して叫び出しそうだけど、そうすれば見つかって殺されてしまう。亜須香は必死で口を押えた。
身体の震えが止まらない。こんなに震えていたら、相手に見つかってしまいそうだけど、どうしても抑えることが出来ない。
「ビシャモンテンノゴカゴノモトニツドイシワガグンフタヒャクシジュウハチシノメイユウヨ。ソノスベテノタマシイヲコノヨニカイホウスルマデ、ソノカズアトヒトヒャクサンジュウシ」
そう言うと、鎧武者の脚は出口へと向かい歩き始めた。
どうやら気づかれなかったようだ。
――チャンチャラチャンチャン。
亜須香がホッとした瞬間、スマートホンの着信メロディが鳴る。
――だ、誰よ! こんな時に。
とっさに確認すると、ディスプレイには沙耶の文字。
もうバカ! 腹を立てて上げた視線の先に、しゃがんで覗き込んでいる鎧武者の顔があった。
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