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コースとコース外を隔てることを示すロープの向こう側は、見事に崩れて崖のようになっている。
おそらく雪崩になったのだろう。
旬は?
指導に夢中になっている間に、さっさと麓に滑り降りたのなら良いのだが、やたらとこの下の方を気にしていたようだし……。
「あっ!」
「どうしたの?」
香里が聞いてくる。
「あれ、旬のボードだ!」
翔馬はそう叫ぶのと同時に、そっちに向かって急角度の斜面を滑り降りた。
「ちょっと井上くん。余震が来たらやばいって!」
香里の声を背後に聞いて、そういえばその通りだと思った。
今余震が来れば、自分も雪崩に巻き込まれかねない。
それでもすでに滑り降りている翔馬は、このまま旬を捜したいと思った。
雪に埋もれたままだったら、旬は死んでしまう。
一刻も早く助けなければ。
翔馬は旬のボードのところまで滑り降りると、周囲を確認した。
「えっ?」
翔馬は唖然とする。
その目に意外なものが飛び込んできたのだ。
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