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「ちょいと##NAME1##行ってきておくれ」
「はい!」
これから店が忙しくなる夕刻の少し前
母と弥彦、そして私が三人で支え合って営んでいる小料理屋に駆け込んできたのは、名店・夕霧のお女中さんだった。
(あ、この人。父が生きていた頃からいる人だな…)
お国ことばに少しだけ特徴があって…蓮っ葉なべらんめえ口調が印象に残る、それでもとても美しい人だ。
母はちょうど店の裏手にいて、弥彦は仕込みの真っ最中…
玄関口で水をまいていた私に、息を切らしながらやってきて、唐突に告げたのだった
「あんたの母さんには話をつけてあるから、お運びを手伝っとくれ」
有無を言わせぬその姿に圧倒された、私は、桶と柄杓をあわてて片付け、襷を解く事で、応えていた。
今思えば…
なぜ、とここで思わなかったのは、なぜ?
不思議なご縁の始まりだった
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