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さて。
そんな、ある晩の仕事帰り…。
俺が妻には内緒で、とあるバーで一人、安酒を飲んでいると…
偶然、カウンター席の隣に座った一人の男と、妙に意気投合して仲良くなった。
男の名前は、鈴本。
サラリーマンだと言う。
俺と鈴本は、酔いも手伝ってか、話題の内容が徐々にお互いの妻の悪口大会へと変わって行った。
すっかり安酒に酔っ払った俺は、
「ああ…妻が死んでくれればいいのになぁ…」
と、思わず冗談めかして言ってしまった。
すると…
「おや?あなたもですか?」
と、やはり酔って赤ら顔の鈴本が口を開いた。
何でも…
彼には、若い愛人がいて、妻が凄く邪魔な存在なのだと言う。
(こんな話、普通は初対面の人間にはしない、とは思うのだが…酔いのチカラがなせるワザだったのかもしれない)
それから、俺と鈴本は…
何度か会って安酒を酌み交わした。
そして、会うたびに…
「ああ…妻が死んでくれればいいのになぁ…」
と、冗談めかして語り合った。
しかし、いつしか…
その冗談が…
マジメな『願望の話』へと変わっていき…
かくして(?)…
俺と彼の間に…
『交換殺人』の話が出始めるようになる。
俺が鈴本の妻を…
鈴本が俺の妻を…
それぞれに殺害し、
自分の妻の殺害時刻には、お互い完璧なアリバイを作っておこうと言うのだ。
今にして思えば、何とも短絡的な発想だとは思うが…
日頃から常に妻の殺害を妄想し続けていた俺は、
思わずその話に乗ってしまったのであった。
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