第1章

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ショーが始まった。 食い入るようにイルカの動きに見入る夏美。 いつまでもみていたい。そんな気持ちが伝わってきた。 その時だった 信じらないことが起きた。 「ママ、ママ・・」 夏美が喋り出した。 夏美が指さす方向には可愛いイルカ、そしてそのイルカに餌をあげながらとても生き生きしている女性調教師。 目を疑った。そこにいたのは奈美だった。 なぜ、ここに? 驚きと嬉しさと疑問が入り混じる。 ショーを終えた後、幕が上がる前に夏美が奈美に駆け寄った。 奈美も夏美に気づいた。目を丸くしている。抱き合い声をあげて泣き始めた。感動の再会だった。 その夜、奈美から全てを知った。 子育てに悩んでいたこと、そんな時にここのショーを見て観客を喜ばせるイルカの調教師になりたいと思ったこと。とても言い出せずに一人でここの調教師になるために働き始めたこと。 とても責めるきにはなれなかった。だけど夏美のために戻ってきてほしい。そう告げた。 一ヶ月後、夏美の失語症は跡形もなくなくなった。夕食を作る奈美と夏美の笑い声が今日もリビングに響いている。リビングにはイルカさんの風鈴がチリンチリンと夏の到来を告げていた。
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