第十一章 時魔導士カメリア

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第十一章 時魔導士カメリア

 車輪のモンスターを撃破し魔法石の原石を手に入れたハヤト達は山の麓にある宿屋で休息を摂っていた。宿主から豪勢な山の幸を振る舞われ一般客では手の届かない特別な部屋へと案内された。  宿屋には結界が張られているがその敷地内にはジェリースライムのアマモの姿があった。街の大規模な結界と違って個人的な結界は融通が効くようだ。  結界師は直接戦闘を行うことはあまりなく仕事や生活費を稼ぐ手段としてその能力を使う者が多い。その多くは結界のために精製された魔法石と箱形の装置を組み合わせて結界を作り出す。  結界はそれだけでは効力を持たず、モンスターに特有の波長を捉えて、そこからモンスターが入り込めない波長を計算して結界へと反映させる。そういう点においては結界師は職人のような技術と特殊能力を併せ持つ非戦闘員のスペシャリストである。  魔法石の精製や装置は一般の職人によって作られることもあるが、自身の能力が発揮されやすいようにその道具にこだわりを持ち自ら作り出す職人泣かせの結界師もいる。宿主はそのタイプの結界師であった。  外に置かれたテーブルの上にハヤト達が手に入れた紫色の鉱石がある。  辺りは暗くなっていて椅子に座った宿主がランプで鉱石を照らしながらルーペで熱心に眺めている。それを偶然気晴らしに外へ出ていたハヤトが見つけて宿主の向かいの席に座った。  宿主は鉱石のほんの一部をアイスピッグで割ると用意していた顕微鏡に乗せてレンズを覗き込んだ。ハヤトが興味有りげに宿主に訊ねた。  「これって本当にすごい鉱石なんですか?すごい鉱石だとどんなことに使えるんですか?」  宿主はレンズを覗き込んだまま答えた。
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