第十六章 紫色の涙(前)

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 「うん!あ、すいません。はい!ですね。これから兵士を志す者として言葉使いには十分に気を付けなければいけません。ほれアマモそこを避けるんだ。」  ボブはアマモを退けさせようと手を振るが心の中ではそこに居続けるように指示を出している。もう一人の兵が業を煮やして荷物に近付いて来た。  「ええい!君は魔物使いでありながら自分が飼っているモンスターをどかすこともできないのか。大司教様とは雲泥の差である。悪いがジェリースライムは私が力づくで荷物から引き離す。怪我を負わせるかもしれないが理解して頂こう。」  兵士がそう言うとアマモへ手を伸ばした。その瞬間になってやっとカメリアの時魔法が発動した。ボブが荷物を開けるとカメリアがあくびをしながら出て来た。カメリアが言った。  「ごめんなさい。あれ以来あまり寝てなくて。何もしないでじっとしてたものだから寝ちゃってたみたいね。それじゃ私は先に中へ入ってグレッグから聞いた安全な隠れ場所へ移動してますね。」  カメリアはそのまま走ってハヤトとゾーイを追い越して施設内に潜入する。残された三人はそのままその場で立ち止まっている。その間にボブはリュックサックを閉じてアマモを先程と同じ場所に乗せた。やがてカメリアの時魔法が解除されて時間が元通りに流れた。  「ピギーッ!」アマモは兵士に捕まる直前に荷物から飛び跳ねて離れた。  「最初から素直に避けやがれ!まったく。なんだ。中はほとんど何も入ってないじゃないか。特に怪しい物は持っていないようだな。ではこの先に行って良し。まずは左を真っ直ぐ行くと事務局があるのでそこで入団の手続きをするように。では今後ともよろしく!」  ボブが門をくぐると扉は閉められた。施設内に入った三人を案内する者もいない。想像より杜撰な対応にハヤト達は再び面食らいながらも事前の打ち合せ通りに行動するためカメリアが隠れている場所を探す。  まずは受付の場所へ向かう体裁で左を真っ直ぐ進む。花壇を見つけたらパンジーが咲いている辺りで右の道へ曲がる。教団の者が通りかかっても手続きを済ませた体裁で堂々と進む。その通りへ出ると一際古い家屋があるので周囲に人がいなくなるのを待って家の奥へと回り込む。そこにカメリアがいるはずだ。
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