第十六章 紫色の涙(前)

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 「おやおや。さっきから大司教様が突然無口になったり動かなくなったりしていたから何だろうって思っていたらこういうことでしたか。あなたがセブンハマーの時魔導士カメリアね。時魔導士がわざわざここへ何の用かしら。とりあえず仲間から消していきますね。」  女の魔法使いが乗っている杖に意識を向けると巨大な火の玉があらわれた。その杖先を回転させると大きな火の玉がハヤトを襲う。ハヤトは間一髪のところで逃げ切る。戸惑いを隠せないカメリアがハヤト達に言った。  「あれはグレッグさんが言っていた教団の調査員か何かで上級魔法使いのキリカとかいう女っぽいわね。なぜこの中で動けるの?」  ゾーイが何かを思い出したが自信なさげに言った。  「なるほど上級の魔法使いか。キヨメガワには魔法学校の先生でも中級までしかいないけど昔、先生が言ってた気がする。確か上級の魔法使いの中には味方にだけ効果をもたらす魔法を敵でありながら享受できる特殊な能力を使える者がいると。」  「なんてことなの。もうこれは詰んだかもしれない。」  珍しくカメリアが弱音を吐いて嘆いた。キリカはその後もハヤトを先に倒そうと決めたのか執拗に狙っている。ハヤトが言った。  「まだ諦めちゃいけない。時魔法は止めないで。それならそれでやれることがある。」  二発目の炎の玉がハヤトを襲う。ハヤトはそれを逃げようとしない。魔法剣を構えると巨大な火の玉を魔法剣に取り込んだ。  「一応、味方からの魔法ってことになるから魔法剣に取り込めるのか。そういうことか!」ゾーイが言った。  ゾーイも負けじと合成魔法の準備に取りかかるため意識を集中させた。カメリアは気を取り直して時魔法を継続させるように努めている。しかし現状はゾーイしか直接キリカに攻撃を与えることができる者はいない。キリカが高いところにいるためハヤトは攻撃を仕掛けることができないでいる。  キリカはゾーイを狙い始めた。ハヤトは魔法剣に宿っている炎の魔法を当たらないとは思いつつもキリカに向けて解放するがやはり届かない。しかしゾーイを狙った火の玉を再び魔法剣に宿すことで攻撃を防いだ。  「何なのそれ?ずるいわ。でもいつまで保つかしら。それにそこの杖を持たない魔法使いが変わった魔法を準備してるみたいだけど私が避けたら終わりじゃないの?打てるものなら打ってみなさい。」
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