第十六章 紫色の涙(前)

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 「その前にこのキリカっていう女の子のアイディカードをもらっておくのはどうかな?この先必要になるかもしれないし、あって損はないと思う。だからその…、いくら敵とはいえ女の子の服の下を弄るのは良くないと思うんだ。だからカメリア様が探してくれると助かる。」ハヤトが言った。  カメリアはそれに従って男三人には別の方を向いてもらい、気を失っているキリカの衣服をはだけさせて入念にカードを探している。手足や口元が縛られているのをそのままににして器用にじっくり調べた。なかなか見つからないのか更に衣服を何度もずらす音が聞こえた。仰向けになっていたキリカの身体をうつ伏せにするとカメリアが歓声を挙げた。  「やっと見つけたわ。それにしてもこんなところに隠してるだなんて。」  カメリアはキリカを仰向けに戻して衣服を着せた。カメリアはカードをボブに預かってもらうように頼んで手渡した。ボブは快く大きなリュックサックの中に入れた。  そしてボブはキリカをもう一度寝かしつけた。ボブがこの技がただ眠らせるだけでなくその間に本人の治癒力を上げて傷の治りを早くするのだと言う。そのことに異議を唱える者はいなかった。  玄関口の方が騒がしくなっている。皆こっそり足音を立てないように廊下へ出て耳を澄ませた。見張りの男が別の兵に話しかけられているようだ。  「目撃者はいないが広場の方で戦闘の跡が見つかった。考えられるとすればさっき教団に加入するために門を通された男三人組が怪しい。この辺りで不審な男たちを見なかったか?」  「いえ、ずっとここで見張っていましたがそのような者は見ませんでしたよ。もし見かけたらすぐに報告します。」  「そうかわかった。大司教様に報告していかねば。引き続きここで怪しい者はいないか見ていてくれ。」  四人はまた部屋の奥へと移動する。兵士達の会話を聞いたカメリアが言った。  「急がないと。もし大司教が居場所を変えてしまったら見つけることすら困難になってしまう。」  その時ゾーイが何かを思いついて言った。  「この魔法使いの杖使えそうだな。これに乗ってその女の子が出て来たところに大司教がいるかちょっと見て来ようか。ついでに大司教が首に身に付けてる目的の鍵を取れたら取ってくる。」
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