第十八章 それぞれの夜明け

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 陰鬱でじめじめとした地下牢には見覚えがある人物がいた。それは初めてハヤト達がカメリアと謁見した際に口うるさくその場を取り仕切っていた大臣だった。正確には既に職を失することになり囚人でしかないその男のことをカメリアに訊くと教団のハニートラップじみた策略にはまって弱みを握られ機密情報を吐露していたことがわかったそうだ。  特に目を合わせることもなく、通り道ではなかったので近寄ることもない。向こうから声をかけられることもなく三人はグレッグの独房の前に着いた。  ハヤトとゾーイは失踪した教団の上級魔法使いキリカのことを話した。グレッグはさほど詳しく知る仲ではなかったことを言った上で教団の調査団は危険な調査を行う上でそれなりの能力や強さを身に付けている者が多いと言った。教団の兵士よりも戦闘に秀でていることもあり、ある意味では特殊部隊という方がしっくりくるなど独自の見解を語った。  それからグレッグは自らの願望ついても語った。いつの日かここを出所することが許されるならばセブンハマーの兵に志願したいという。カメリアはまだグレッグに対する処罰が決まっていない上、前科のある者が兵に採用されるのはこれまでに例がないと言った。しかし教団の施設へ乗り込む前に有益な情報を惜しげもなく教えてくれたことによって罪が軽くなるように努力してみるという。  他にも消えたドラゴンのことやグレッグも知らなかった大司教の魔物使いとしての戦闘能力など様々なことを語り終えるとハヤト達は地下牢を出て家路に着くことにした。カメリアも城へ戻った。  宿主の家には灯りが点いており親子が水入らずで過ごしているようだった。二人はそっと離れの方に向かおうとするが、二人に気づいた宿主の方から声をかけられた。その横には宿主の息子もいた。息子とはいってもハヤト達の親であっても違和感がない程年齢が離れている。  宿主は息子が街に帰ってくることになったのは嬉しかったが明日には山の麓の宿屋に戻らなければといけないのだという。交代で番をしている結界師の元同僚を今回の件で予定より待たせてしまっているようだ。その一方で息子は魔法石の精製が終わるまでしばらく街に留まることになったため次の交代時には再び親子水入らずで過ごすことができる。
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