第十八章 それぞれの夜明け

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 柵の先はとてつもなく広い吹き抜けになっていて見下ろすとたくさんの人が自由に好きな席に着いてセルフサービスの食事を摂っているのが見える。  その間に見える下の階層にはハヤトの周囲と同じ土壁やドアや柵があるのが見える。ハヤトは下から数えて自分が4階にいることがわかった。  上の方を見ても同じような階層がどこまでも続いている。  今度は柵に身を乗り出して真上の方向を見てみるとその天井も見ることができず、計り知れないくらい無限に階層が積み上げられているのがわかった。  ハヤトは人がいる1階を目指して誰かに回覧板の住所と思われる数字の羅列の場所を訊くことにした。  ハヤトは横方向に移動して下へ降りる階段がないか探した。初めに左右のどちらへ行くか迷ったがなんとなく左に向かって歩き始めた。ハヤトは階段を探しながらもドアの横に掘られている数字の羅列を確認した。  数字の羅列には規則性を確認することができず隣の部屋に数字が続く訳でもなく桁数も異なっているためハヤトはますます困惑する。  その一方で内心ではハヤトは階段が見つからなかったとしても自分の身体能力を活かせば柵を越えて階下へ移動することができる自信を持っている。  辺りに人の気配はなく見渡す限りでは1階以外には誰も見当たらなかった。  ハヤトはおもむろに通路の床に自分自身がすっぽりと通り抜けることができるくらいの大きさの円い穴を見つけた。穴の中を覗き込むと階ごとに真下に全く同じ大きさの穴が開いていた。上の方も同じだったがやはりどこまでも続いていて終わりが見えない。しかし下の方には一階の床が見えていた。  ハヤトはこれでは上に住んでいる人が可哀想ではないかと思っている。もしくは自力でこの穴を通って階を移動することが間違った方法なのかもしれないと疑念を抱いている。それでもハヤトは穴へ入って降りることにした。  一度に1階まで降りるのは怪我をしそうなので穴の一つずつに足から入れて、その穴の縁を手で掴みぶら下がっては上体を起こして勢いをつけて下の穴を避けるように階下の通路に着地する。事前に穴を覗き込んで下に誰もいないことを確認すると自分より先に回覧板を投げ落とした。その繰り返しでそれほど苦労せずにハヤトは1階まで到着することができた。  1階は極端に広く、人も大勢いた。老若男女問わず様々な人種と色んな衣服を着用した人で溢れかえっている。
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