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大小の様々な丘が連なった起伏の多い道のりは馬車で移動するには適していない場所がいくつもある。馬車の歩みが遅い場合には降りて御者と一緒に坂を押し上げて進むこともある。馬に負担をかけさせないためにたまにゾーイは馬車から降りて杖に乗って並走する。
最も御者を悩ませたのはあの黒い蟹の形をしたロボットのモンスターと戦った辺りだった。ハヤト達はその場所がなぜこんなに地面の凹凸が激しく地盤が不安定なのを知っているため妙に感慨深い。
深いところから掘り起こされて降り積もった土が昨夜の雨で泥になり厄介なぬかるみになっていた。普通に歩くことさえままならない中で馬と人間の関係が逆転し御者と力を合わせて馬を引いて進む。結果、皆泥だらけになってしまう。
それでも過剰とも思えるような待遇の良さに照れと不慣れさをどこかに感じていた二人にはなんだかそれが心地よく感じられた。奇麗好きなゾーイですら楽しそうだったのはハヤトにとって意外な側面を見たような気にさせた。
道の高低差が比較的緩やかな雑草が生い茂った帯域を馬車が颯爽と進んでいくと、遠くに山猫のモンスターの群れが走っているのが見えた。
馬車は雑草を踏みにじって馬の蹄や車輪からも大きな音を立てているが山猫のモンスター達は一向に振り返る素振りを見せなかった。ボブがいないからなのかもしれないとなんとなくハヤトは思った。
ボブが飼っていた初代のアマモを筆頭にどこへ何をしに向かっているのかわからないが次第に距離が離れて姿が見えない程遠ざかっていった。
しばらくすると段々畑と立派な建築物が建て並んでいる景色が遠くに見えてきた。
ゾーイは潮の香りがしてきたからもうセブンハマーの街に近いなどと適当な話しをする。海は街を挟んだ向こう側にあるので潮の匂いがここまで届くのかは疑問だが街を出た時はこの辺りが濃霧に包まれていたことからまんざら嘘でもないのかもしれないと、ハヤトはこっそり鼻で息を深く吸い込んでみたがわからなかった。
街が着実に近付いてくる。ハヤトが街の外側にあるモンスターの小屋の方へ目を向けた。そこにはジェリースライムのアマモは当然いないのを知っているが見てしまう。
そこにはもうモンスターは一匹もいなかった。思えばここへ来る間も山猫のモンスターの群れを見かけただけだった。
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