第十八章 それぞれの夜明け

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 既にたくさんの人々がセブンハマーから教団の施設へ向かっており、その安全のためにほとんどが撲滅されたのだろうと推察された。  やはりセブンハマーは大都会だった。その街の規模の大きさを目の当たりにしてハヤトは改めてそう感じた。  馬が歩みを止めた。ハヤトとゾーイが馬車を降りて御者にお礼の言葉を述べて別れた。ハヤトとゾーイは一緒に門をくぐった。  門番は素通りした二人を咎めることはなかった。ハヤト達は顔を見ただけで中へ入ることが許されるようになっていた。  ハヤト達はすぐに宿主セバスチャンの自宅の敷地内にある離れに向かった。家の前を通りかかると宿主は留守にしているのが窺える。ハヤトは離れの鍵を開けて中へ入った。  中は時が止まったようにそのまま保たれていた。ボブのベッドを見ると心が痛む思いがした。馬車に乗って来たとはいえ道中では力仕事をしたような場面が何度もあったため二人は疲れを感じていた。しばしベッドで寝転んで休む。ゾーイはそのまま深い眠りに落ちてしまった。ハヤトは天井を眺めながら物思いに耽る。  街の人々の様子も何事もなかったかのようだった。ドラゴンが襲って来た当時の人々の絶望した姿は全く見る影もない。それもまた先代の時魔導士によるものだと考えるとその能力の逞しさと同時に脅威のようなものを垣間見た気持ちになった。  ハヤトは自分自身も時魔導士の能力を持っていることを指摘されたことに対してまだ気持ちの整理がつかず複雑な想いでいた。ハヤトは部屋の天井を見ているがそこにはない概念的なことに意識を巡らせていた。  夜になるとどこからかハヤト達の帰宅を知ったカメリアの使いの者が訪ねてきた。ハヤト達は城に招かれて食事を摂ることになった。  道中気になったのは城の前に紫の結界で閉じ込められていたドラゴンの姿がなかったことだ。  同行している兵士に訊ねたところ昨日の夜まではいたはずが未明頃にこつ然と姿を消したのだという。教団はモンスターについて探られないように捕らえられた場合、その存在を消去する方法があるのだと改めて説明された。話をしている内に城へ到着した。  城の中の兵士や事務官の見る目が変わっていることを実感する。それでもハヤトが時魔法の使い手であることを知る者はいないようだ。それ程騒ぎになる訳でもなくハヤト自身もそれを望んでいないため適度な距離感を心地良く感じている。
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