第十八章 それぞれの夜明け

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 食堂まで案内してくれたのは以前もハヤト達を案内してくれたせわしない感じのする兵士だった。その後も宿主セバスチャンや魔法石を精製する職人であるその息子の指示によって何度も宿主の家を行き来していたのだという。  兵士は目を閉じながらでも宿主の家には行けるのではないかとうそぶいた。そんな他愛ない話しをしている間に二人は食堂にたどり着いた。先日と同じ場所だったがその場に居合わせた人物はその時よりも多かった。  先代の時魔導士ゾーイとその夫が席に着いていた。その男はセブンハマーの元市長であり魔法石を精製する事業と貿易を行っている。その夫婦の娘であるカメリアとシーラ、他には宿主セバスチャンとその息子の姿もあった。その隣には元教団の信徒で結界の研究員のブライトもいた。  ハヤトとゾーイが席に着くとゾーイがシーラの異変に気がついた。泣き腫らしたような瞳とその周りの肌が赤くなっている。  シーラが二人の方を見ると耐え切れず泣き始めた。シーラはボブがいなくなったことを悲しんで号泣しているようだった。  隣にいたカメリアがそっとシーラの方に手を添えて慰めている。  ゾーイはそんなシーラを見て精神的な衝撃を受けた。シーラと話するのを楽しみにしていたがゾーイは今回はおとなしくしていようと考え倦ねいている。  挨拶や祝辞の言葉を告げると会食が始まり、程なくして先代の時魔導士ゾーイがハヤトに話しかけた。  「ハヤトよ。時魔導士として修練に励む決心はつきましたか?」  「いいえ。まだ考えているところですが僕はこのまま魔法剣で戦うのが性に合っているような気がしています。」  「その選択も決して悪くはないであろう。時魔法を使うことができる魔法戦士というのも稀な存在に違いない。自分の道を究めることが大いなる発見に繋がることになる。これは私の先代の時魔導士である父が生前に言っていた言葉です。その言葉によって私は単に魔法で戦うのではなく政治を行うことに注力することを決断したものです。ハヤトにとって独自の道を切り開いて邁進することが何より大切なことだと私は考えます。ところで…。」  時魔導士ゾーイが少し間を置いてから再び話しを続けた。
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