第十八章 それぞれの夜明け

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 「教団の施設は彼らの信仰の自由を認めた上でセブンハマーに併合する方向で動いています。今回の件によってこの地方一帯が教団の支配を免れることになりました。ゆくゆくは長年姉妹都市の関係を築いてきたキヨメガワを含めてこの地方一帯を一つの国として治めることになるでしょう。発端は通常の結界を破壊するモンスターへの対策だったのかもしれませんが結果的に教団の施設へ最小限の人員で攻め込んで大司教を伐ち倒し占領することに成功しました。これまで幾度も繰り返されてきた戦争によって多くの血が流されたことを思えば賞賛しても仕切れないような出来事です。ましてやハヤト殿には時魔導士の才がある。エリア5をハヤトが最高責任者として町を治めるというのはいかがでしょうか?」  ハヤトはフォークに刺していた魚の切り身を落とすくらい動揺して、いかにも滅相もないと否定するつもりで首を何度も横に振った。その様子を見て先代の時魔導士が話を続けた。  「きっとハヤトなら断るだろうと思っていました。ただし今の時代、名誉ある自治体には例え形式上のみの存在だったとしても時魔導士がいることが習わしとなっています。せめて名義だけでも良いのでエリア5の時魔導士としての役職に就くことを望みます。実際にはいなくても結構です。」  それを聞いたハヤトはしぶしぶ了承した。その場に居合わせた皆がそれを祝福して雰囲気が明るくなった。次に時魔導士ゾーイは同じ名前である魔法使いのゾーイに話しかけた。  「私と同じ名前で初級魔法使いのゾーイ君。その実力は中級以上であることは確かで、施設内では教団の上級魔法使いをも倒したとか。この件もハヤト同様に名義上のもので構わないので話を聞いて下さい。セブンハマーには武器の扱いに長けた兵士は大勢いますが魔法使いがそれほどいません。そこでこれからは魔法使いの養成にも力を入れて、いずれは軍の魔法部隊の拠点をエリア5に設置するつもりでいます。ゾーイ君には魔法部隊の特別な班の班長をしてもらいたいのです。特別班には他に所属する者は今のところいませんがゾーイ君の得意な合成魔法の修練と研究に力を注いで頂ければ結構です。もちろんエリア5にいる必要はありません。」
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