第十八章 それぞれの夜明け

1/16
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

第十八章 それぞれの夜明け

 ハヤトはドアを叩いている音に気がついて目を覚ました。それほど広くない一間の部屋の中に一人でいた。ベッドの上で身を起こして立ち上がる。辺りを見回すと天井も壁も床も赤い土でできている。  こんなところで寝てたっけと思いながら扉をノックする音が鳴り止まないためハヤトは待たせてはいけないとドアに向こう。扉もドアノブも木でできていた。  ドアを開けるとそこには人相の悪い軽装の男が立っていた。腰にはナイフを携行している。ハヤトが誰なのか訊ねるとその男は臥虎の山の山賊だと言う。男は今ここへ来たのは回覧板を持って来ただけだから心配するなと言った。伝えるべき内容も次へ回す先も回覧板に書かれているから読んでくれと言い残し男は帰っていった。  ハヤトは強引に渡された回覧板を持って部屋のドアを閉めると立ったまま読み始めた。四角い木の板に挟まれた一枚の紙にはこう記されていた。  『リュウネクストはきっかけにすぎない。それは神話を育むために必要だった。本物の神話は人々の空想の産物ではない。神話こそが確固たる存在であり、生きるという言葉は本来神話のことを指し示している。神話が生きているからこそ我々の存在がある。』  ハヤトには何のことだかさっぱり理解できなかった。その文章の下の方に四角い枠で囲まれた数字の羅列が10組ある。そのうちの8つには既にチェックマークが記されており各々が丸だったりペケマークなどで自由に数字の羅列の上に上書きしている。ハヤトは9つ目の羅列に回覧板の内容を読んだという印を書き記すべきか悩んでいる。  ハヤトは部屋の中にあったペンを持ってドアを少し開け、外に半身を乗り出し周囲を見てみるとすぐ横に9つ目の数字の羅列と一致するものが土壁に掘られているのを見つけた。ハヤトは安心してレの字のチェックマークを書き加える。そして最後の10個目の数字の羅列が掘られている部屋を探すことにした。  ハヤトが部屋の外へ出て辺りを見渡すと同じようなドアが等間隔に限りなく存在しているのが見えた。  通路は左右どちらを見ても果てしなくどこまでも続いている。  扉の前方には土でできたハヤトの胸くらいの高さの柵があり、通路と平行になっていて同じく終わりが見えない。  ハヤトは回覧板を渡す部屋が見つけ出せそうにないことに気がついて途方に暮れている。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!