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「あの男がまた、けっこういいやつなんですよ」
そしてシャンパンを飲み干した彼は、そのグラスを、そっと手すりの上に置いた。
中身を無くして逆に不安定になったグラスは、いくつかの雫をまとったまま、少し儚げに見える。
あたりさわりなく、ここも笑っておくべきところなんだろうか。
たぶん、それが正解なんだと、そう思う。
だけど、そう思えば思うほど笑えなくなっていくような気がして、私はひとつ、大きく息をした。
このひとは、私と似ている。
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