千年前から見つめていた

15/25
前へ
/25ページ
次へ
「……お気持ちを、お伝えにはならなかったんですか?」 思い切り、優しく柔らかく言葉にしたつもりだったのに、唇からこぼれた私の声はなぜか、とても硬かった。 そして私も自分で、その硬さに驚いていた。 とがめられたように思ったのだろうか、彼は私を見て、照れたように微笑んだ。 「いや……伝えようと思ったこともありました。……喧嘩したって泣きつかれた時や、進路に悩んでた時……それこそ何度かね」 でも、言えなかった。という小さな呟きとともに、彼は背中を向けた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加