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水平線はようやく薄赤く染まり、ゆっくりと夜のとばりが降りようとしていた。
もう少し暗くなったら、いなくなった太陽の代わりに中庭には篝火が焚かれ、さらに幻想的な雰囲気をかもし出す。
たたっ、と小さな足音が聞こえて内階段に目をやると、ちょうど板倉が足早に駆け上がってくるところだった。
「先輩、すみません」
差し出された手のひらにイヤリングを落とし、微笑む。
「よろしくね」
了解しました、と軽くポーズを取って階段を下りていくその背中を見送って、小さくひとつため息をついた。
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