千年前から見つめていた

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それは板倉がなかなか仕事のできる、気のきく後輩だからだ。 わりと背が高くて、わりと爽やかだからでは、決してない。 だって何より、板倉には恋人がいる。 チャペルの後方のドアを開けて、私はバルコニーに出た。 少し風が出てきたようだ。 初夏の夜の風はどこか生ぬるくて、少しだけせつない。 私は、建物の中から出てきた板倉が、プールの横の所定の位置に立つのを、ぼんやりと見た。 板倉はこちらを見上げて、少しだけ頭を下げる。
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