猫のいる出窓

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猫のいる出窓

 うたた寝の途中、ふと視線を感じて窓の方を見た。  出窓のところに飼い猫がいる。視線はあいつか…と思ったが、猫の向こうに小さな人影が見えた。  男の子? それとも女の子?  幼いせいかどちらとも判別できないくらいの子が、出窓の外でじっとウチの猫を見ている。  飼い主の欲目を抜いても、ウチの猫は可愛いもんなと、内心で自慢げに思っていた時がついた。  ここは二階だ。  たちまち目が覚めて窓を見直す。でももうそこに人影はない。ただ、掃除をさぼって薄汚れている窓ガラスに、小さな手形らしき跡があった。  反射的にカーテンを閉める。差し込んでいた柔らかな陽光が遮られ、猫は不服の唸りを上げたが、今日ばかりはその声を無視した。  …あれ以来、あの出窓はカーテンを閉じたままで、居心地が悪くなったせいか、猫もろくに近寄らない。  絶好の昼寝場所を奪ってしまったのは申し訳ないけれど、飼い主としてはその身の安全が第一。もう、出窓を猫の居心地の良い場所に戻す気はない。 猫のいる出窓…完
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