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『廉』の都、牛越に来たのは初めてだった。呂舜(リョシュン)は都の鮮やかさに眼を奪われていた。
行き交う人々は藍や碧といった高貴な色合いの衣服で着飾り、軒を連ねる店々は派手な装飾がほどこされていた。まさに高貴な雰囲気に圧倒されていた。
呂舜は馬を降り、轡を引きながら歩いていた。
牛越の城郭(マチ)に入った瞬間から、都の土を踏みたい、と思ったのだ。
華風1日(カフウツイタチ)齢初(レイハツ)の朝(チョウ)は1年の始まりの日である。
毎年、父に従い、牛越の王宮へ、齢初の朝の祝賀に行くのは長兄の呂寧(リョネイ)、もしくは次兄の呂虎(リョコ)の仕事だった。
それが、今年は自分が指名されたものだから、呂舜は尻がむず痒いような照れ臭さと、一人の男として認められた喜びがない交ぜになっていた。
愛馬、飛舜(ヒシュン)が嘶く。
知らぬうちに、轡を引く手に力が入っていたようだ。
「あぁ、ごめん、飛舜」
呂舜は飛舜の鼻面を撫でた。
飛舜が2度、小さく首を振った。
飛舜は『昌産馬(ショウサンバ)』の母と『西卍駒(セイバンク)』の父の間に生まれた黒馬だ。
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