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『昌産馬』は体が大きくて丈夫なのが特徴で、『西卍駒』は疾風のように速く、耳が長い。  飛舜は重さ10貫6斤4塊(534キログラム)の巨体で、どちらかといえば、母馬の影響を色濃く受け継いでいるように思う。それでも、駆ければ、中空を飛んでいる錯覚に陥ってしまうほど速い。 飛舜は昨年の齢初、呂舜が齢15になった祝いに、父が買ってくれた。 「都はどうだ、舜」 馬を引きながら、前を歩く父、呂瑁(リョボウ)が訊いてきた。 「凄いです」 呂舜は辺りを見回し、言った。 「なんというか華やかで、大きくて」  父がそこで吹き出した。 「大きいときたか。お前みたいな巨漢が言うと、とてつもなくおかしい事に聞こえてくる」  さっきから、道行く人々が呂舜をじろじろ見てくる。 4尺4短(2メートル2センチ)。呂舜の身の丈である。 呂家の巨熊とあだ名される呂舜の巨体に、通行人は眦(マナジリ)を裂き、驚いている。 「都の人間をどう思う」 「洗練されています。俺は自分がいかに田舎者かを実感していますよ」  父がまた声を立てて笑った。
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