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 何故笑うのか、呂舜にはよくわからなかった。 呂舜が普段生活しているのは、牛越より東に位置する漓門山(リモンサン)の塞だ。  漓門山の麓に荘(中規模の町)や村はあるが、牛越のように大きな建物はないし、綺麗な着物を着けて、闊歩する人もいない。 「初めて、寧を都に連れてきた時、あいつにも都の感想を訊いた。すると、どう答えたと思う?」 「大きい兄上ですか。さぁ、なんと答えたのでしょうか」 「たいした事はない。くだらぬ人間ばかりだ。都がこの程度とは、拍子抜けです、と寧は答えた」 「さすがは大きい兄上。俺とは違って立派ですね」 「馬鹿」 父が振り返って言った。 「強がりだ。あいつは初めての都に呑まれまい、と精一杯の虚勢を張って見せたんだ」 「呂家の男としての誇り、ですか。やはり大きい兄上は立派だ」  呂瑁が首を横に振った。 「そのような立派なものではない。寧に虚勢を張らせるは、心の闇。呂家軍がまだ『涼』の軍閥だった頃に寧が抱えた心の闇だ」
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