上の村 ③

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「諦めるのはまだ早い!」 私は必死にエンジンをかける。 ピシッ! 窓ガラスにヒビが入り、あっという間に硝子が飛び散ってしまった。 異形の刺々しい足が私の腕に食い込んだ。 そのとたん、ブルルンとエンジンがかかった。 私は、アクセルを目いっぱい吹かすと、異形の足が私の腕の肉をわずかにえぐり、激しい痛みを伴った。 異形の物を振り切り、私は車を急発進させ、村を爆走した。 バックミラーには、信じられないようなスピードで、異形が追いかけてくる。 飛んでいる物もいる! 私はさらに、アクセルを踏み込む。 ガチャン! 飛んでいる一匹が屋根にはりついた。 私は、ハンドルを滅茶苦茶に切り、そいつを振り落とそうとした。 何度か蛇行して運転しているとようやく、ゴトンとその異形は道路に叩きつけられた。 ヤバイヤバイ!なんなんだ、この村は! 車を走らせていると、山の頂上が突然、大きな光に包まれた。 それを見て、真理子が恐怖におののいた顔で叫んだ。 「神の怒りに触れてしまいました!生贄の私が逃げてしまったから。 私たちは、滅ぼされてしまう!もう終わりだわ。終わりよ。」 真理子はさめざめと泣き出した。 光は徐々に巨大になって行き、とうとう村全体を包むほどの大きさになり、強烈な爆発を起こした。 私達の車が、宙を舞った。 ああ、私は、これで人生を終えるのか。 こんな所で。 今までの人生のシーンが走馬灯のように駆け巡る。 さようなら、父さん、母さん。先に行く親不孝をお許しください。 気がつけば、私は、駅の駐車場でハンドルに突っ伏していた。 私は、長い夢を見ていたのか? 私の頬をぬるい風が撫ぜた。 運転席の窓ガラスは割れている。 そして、隣には全裸で気を失っている真理子が横たわっている。 夢じゃなかったんだ。
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