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「諦めるのはまだ早い!」
私は必死にエンジンをかける。
ピシッ!
窓ガラスにヒビが入り、あっという間に硝子が飛び散ってしまった。
異形の刺々しい足が私の腕に食い込んだ。
そのとたん、ブルルンとエンジンがかかった。
私は、アクセルを目いっぱい吹かすと、異形の足が私の腕の肉をわずかにえぐり、激しい痛みを伴った。
異形の物を振り切り、私は車を急発進させ、村を爆走した。
バックミラーには、信じられないようなスピードで、異形が追いかけてくる。
飛んでいる物もいる!
私はさらに、アクセルを踏み込む。
ガチャン!
飛んでいる一匹が屋根にはりついた。
私は、ハンドルを滅茶苦茶に切り、そいつを振り落とそうとした。
何度か蛇行して運転しているとようやく、ゴトンとその異形は道路に叩きつけられた。
ヤバイヤバイ!なんなんだ、この村は!
車を走らせていると、山の頂上が突然、大きな光に包まれた。
それを見て、真理子が恐怖におののいた顔で叫んだ。
「神の怒りに触れてしまいました!生贄の私が逃げてしまったから。
私たちは、滅ぼされてしまう!もう終わりだわ。終わりよ。」
真理子はさめざめと泣き出した。
光は徐々に巨大になって行き、とうとう村全体を包むほどの大きさになり、強烈な爆発を起こした。
私達の車が、宙を舞った。
ああ、私は、これで人生を終えるのか。
こんな所で。
今までの人生のシーンが走馬灯のように駆け巡る。
さようなら、父さん、母さん。先に行く親不孝をお許しください。
気がつけば、私は、駅の駐車場でハンドルに突っ伏していた。
私は、長い夢を見ていたのか?
私の頬をぬるい風が撫ぜた。
運転席の窓ガラスは割れている。
そして、隣には全裸で気を失っている真理子が横たわっている。
夢じゃなかったんだ。
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