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あれは、あの丈夫な羽で、中の脆弱な本体を守っているのだ。
長い手足を器用に折りたたんで外敵、つまり僕らから己を守る。
そうして細々と生きながらえてきたのだ。
あれはただ、叩いても死なない。
裏返して、柔らかな中の脆弱な肉体を貫くか叩き潰す。
ただし、あの独特の滑りが裏返すことを容易にさせない。
これも自分を守るための進化なのだろう。
叩き潰すと、かなりの確立で大惨事になる。
柔らかな肉体から、思ったより大量の内臓がはみ出すからだ。
それに最近は絶滅危惧種に指定されているため、容易に
殺すことを禁じられているのだ。保護の目的で、これを捕獲し
研究し、繁殖させている国家研究所もあるのだ。
僕はそれを捕まえてきては、しばらく飼う。
飼われていると、何が足りないのか、割と早い段階で死んでしまう。
それについての、生態は、今も研究者の間では謎も多い。
でも、僕にとっては、どうでもいいのだ。
僕はそれをコレクションすることに意味があるのだから。
死んでもそれを美しいまま保存する薬も買える年になった。
今はもう、僕は独立して、両親とは別々に暮らしているので、
以前のように、コレクションをひた隠しにする必要も無く、
僕は美しいコレクションに囲まれた夢のような生活をしているのだ。
絶滅危惧種をこんなにコレクションしているなど、誰にも言えない。
だから僕は誰一人、部屋に呼んだことはないのだ。
たとえ両親でも。
僕は今、実家の近くの山にそれを捕獲に来ている。
最近はこのあたりも、開発が進んで、かなり数は少なくなってきた。
それでも、ここはそれらの通り道になっているようなのだ。
都市にでもなったらそのうち、居なくなるのかな。
僕は悲しくなった。
会社の夏休みを利用して、僕は実家に帰ってきては、毎年
ここで美しいそれをこっそり捕獲しコレクションすることが恒例になっている。
そして僕は、この夏に運命的な出会いを果たす。
それは今までに見たことの無いような美しい個体だった。
それは美しいだけではなかった。
しゃべるのだ。
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