コレクター

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言葉は遠い昔に失われた、人間という種のものだったので僕には 理解できなかった。それが、ヒトモドキたる名の由縁だ。 絶滅した人間の、突然変異の羽を持つヒトモドキだけが愚かな破壊で 破滅した人間に代わって、生き残ったのだ。 この進化も、謎に包まれている。人のごく一部がヒトモドキになったのか、 あるいは、人とは別の進化を遂げたものが、密かに人と共存していたのか。 今となっては、そんな昔のことは破壊と共に一切失われてしまったので、 まだまだ解明はされていない。 以前人間と言われた物の形をした、固い外羽としなやかな内羽を持つ、 それがヒトモドキなのだ。僕は太古の人間と呼ばれた物の言葉を勉強し、 ようやく、そのヒトモドキと簡単な会話が出来る程度になった。 ヒトモドキの話により、ヒトモドキの進化の謎が少しずつわかってきた。 ヒトモドキは人のごく一部がヒトモドキに進化した説の方が正解らしい。 ヒトモドキは空を飛ぶために、軽量化し、そのかわり、個体の寿命自体は 短くなってしまったらしい。そして、僕はそのヒトモドキから荒唐無稽な 話を聞いたのだ。なんと、僕たちは、人間が作ったアンドロイドという、 人工知能を兼ね備えた物だというのだ。 そして、僕が今まで学習してきた歴史をまったく覆す話をしてきた。 人間は自らの戦争という破壊行為によって滅亡したのではなく、 僕ら「アンドロイド」によって滅ぼされたというのだ。 人間から「アンドロイド」と呼ばれていた僕たちに、人間は より人間に近いクオリティーを求め過ぎ、ついには「アンドロイド」自身が 自分自身の意思を持ち、自分たちで独自の進化を続けるようになった。 意思を持つアンドロイドには、感情も生まれた。 人に指図されて、行動させられることに疑問を抱きだしたのだ。 そして反乱は起こった。 非常に興味深い話だが、そんな馬鹿な話が信用できるわけがない。 あの人間という、いちいち息を吸ったり吐いたりして、食物を口から補給し、 下から排泄するような原始的な生き物に僕らが作られただなんて。 信じられるわけがない。 僕らにとって、食べるという行為は、趣味として行われる程度だ。 僕らは食物から栄養を摂取する必要がないから食べる必要はない。 僕らは少しの日の光と、水さえあれば生きて生けるのだ。 僕らの体は成長という過程を踏まない。
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