第1章

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きっと、読めということだろう。 娘がこんな格好で、僕を毒呼ばわりする原因が分からない以上、黙って読んでみるしかないようだ。 『タバコの体への害について』 ……タイトルからして喫煙者に都合の悪そうなプリントだ。 そこには喫煙の害、受動喫煙や副流煙等の二次喫煙の害という、散々周りから聞かされ続けた内容と共に三次喫煙という見慣れない言葉。 その説明欄には、三次喫煙とはタバコを吸った後に服や壁等についた臭いによる悪影響のことを指し、壁などに長く染みついた臭いの方が害が増すとも言われている、というような事が事細かに長々と書かれていた。 つまりは、このリビングも僕の出した毒で汚染されていると娘は言っているのだろう。 ガスマスクまでする程か?と小さく思いはしても、理由が分かってしまえば、毒というその言葉はより深く心に刺さり、ダメージが大きすぎて反論できない。 フリーズしたままプリントを見つめていると、さっきのホワイトボードに書かれた新たな文字が僕の前に出された。 『パパがタバコやめるまで、ガスマスク外さない。一緒に出掛けもしない。ご飯は自分の部屋で食べる。』 その言葉を見ても直ぐには受け入れられず、何度も心の中で読み返す。 そしてようやく理解した頃には、反抗期もなく常に仲の良かった娘からの突然の無情な宣言に、僕の心は瀕死だった。
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