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それでも、今日は妻も僕たちが外食すると知っているから、晩ご飯を用意していってはいないはずだ。
とりあえずご飯を食べに行って二人で楽しく食事をすれば娘の気も変わるのではないだろうか?
「由亜?この話はまた後にして、ご飯食べに行かない…?」
『行かない。私は先に部屋で食べた。』
僕の甘い考えは、完全に拒否されてしまった。
娘からの毒扱いと拒絶に落ち込んで俯いていると、ふいにぽんぽんと腕を叩かれる。
顔を上げれば、ホワイトボードに新たな文字が書かれていた。
『パパ、タバコやめてくれたら、ガスマスクも外すし、毎日肩叩きもする。週末は私がパパの為に美味しいご飯作るから、パパ禁煙しない?』
その言葉には後光が射して見えた。
休憩や一日の終わりにタバコを吸うのは一番リラックスできる時間だ。それを失うのは辛い。
しかし、タバコを吸い続ければ娘はガスマスクで僕を毒だと言い煙たがる。タバコをやめれば今まで通り一緒にご飯や買い物に出掛けることができ、肩叩きや娘の手料理まで付いてくる。
僕にとっては天国と地獄のような差だった。
「……タバコ、やめるよ。」
『パパ、ありがとう!!』
僕の答えを読んでいたかのような早さでホワイトボードが出される。
ガスマスクの下で、娘がにっこり笑った気がした。
『ご飯、パパの分も用意してあるよ。食べて。』
そう書き加えると、娘はてきぱきと僕の夕飯をテーブルに並べていく。
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