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今、自分が女の眼をしている自覚はある。
ボールキャッチみたいな手は離れた。
ゆるりと向けた先の、シムラの表情は寄せた波が引いた後の砂浜みたい。
我に返ってんじゃないわよ……
スススと後退するシムラは立ち上がり、勝手知ったる我が家か?とツッコミたくなるくらい自然に浴室へと消えた。
ねぇ、私の覚悟はどうしてくれるの?
薄く開いた扉の向こうからはカタカタと音がして、ガチャ……パタンの無情の響きがする。
シムラは洗濯機の中を出したんだ……
小さなショックが肋骨をチクチク刺す。
デコルテ部分のひと撫でして、布の肌触りを自分で確かめた。
キスもされてないし
押し倒されてないし
抱き寄せられてないし
洋服の乱れもない
なのに、燻る名もなき感情。
……私、欲求不満なの?
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