ねぇシムラ、そういうのはちょっと…

17/18
前へ
/166ページ
次へ
今、自分が女の眼をしている自覚はある。 ボールキャッチみたいな手は離れた。 ゆるりと向けた先の、シムラの表情は寄せた波が引いた後の砂浜みたい。 我に返ってんじゃないわよ…… スススと後退するシムラは立ち上がり、勝手知ったる我が家か?とツッコミたくなるくらい自然に浴室へと消えた。 ねぇ、私の覚悟はどうしてくれるの? 薄く開いた扉の向こうからはカタカタと音がして、ガチャ……パタンの無情の響きがする。 シムラは洗濯機の中を出したんだ…… 小さなショックが肋骨をチクチク刺す。 デコルテ部分のひと撫でして、布の肌触りを自分で確かめた。 キスもされてないし 押し倒されてないし 抱き寄せられてないし 洋服の乱れもない なのに、燻る名もなき感情。 ……私、欲求不満なの?
/166ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加