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自分の手元の紙の捲れる音にリズムが出てきた頃、フロアの中央の通路をガツガツ歩く足音に集中力は途切れた。
誰だよ……
顔を上げて辺りを見渡せば、営業マンがシムラの肩を叩くところだった。その様子から声は聞こえなくても二人が親しいのが伝わる。
伝票に目を向けたけれど、もう一度隣の課の島に目がいく。
わたしにだって
笑ってくれてもいいじゃない……
私はシムラを見てるのに。
私だけが見てるみたいじゃない……
席を離れて気分転換したいのに。
ねぇ、シムラ。
何の話をしたら、八重歯を見せて笑うの?
ねぇ、シムラ。
あの日、アルバムの2曲目が好きだって言うから……
あの曲を聴く度に、シムラを想うのよ。
ねぇ、シムラ…
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