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昼休みを終えて、開け放つ窓からは秋の風が入ってきてフロア全体を緩い空気が漂う。課長に頼まれたコピー。単純な作業は退屈で、窓の外の澄んだ青空が食後の眠気を誘う。
コピー機が忙しなく紙を吐き出す中、あの営業マンがシムラの同期だと思い出した。
夏の終わりの飲み会にはシムラもいたじゃない……
そうかそうか、そりゃ仲良いわよね。
歯に詰まった物が取れたスッキリ感が、熱々のコピー用紙の不快さを薄くしてくれる。
「コピー、まだ使いますか?」
自然に横に並んだのはシムラ。やっぱり無愛想で八重歯を隠していた。
「うん、もうちょっと…」
急ぎなら、とセットした紙を取り出すとシムラは何度か首を左右に振った。
「急がないんで、どうぞ」
シムラは席に戻ることなく、一歩離れて私の右後ろに立つ。
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