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「前島さん、あの…」
シムラが何か言いかけたとき、コピー機は用紙無しのアラームを鳴らした。
「え、何?」
ガシャンガシャン音を立てて用紙トレイを開いてシムラに聞き返したら、伝票一枚をヒラヒラさせるシムラはプイッと顔を逸らす。
はぁ?!
話しかけておいて、何なのよ?
ガシャンガシャン音を立てて用紙トレイを閉じて、勢いよく前カバーを閉めた。低い唸り音と地響きみたいにガタガタ揺れるコピー機。
「風邪は引かなかったみたいですね」
背後からポソッと落ちた声に身体が右にブレた。
ねぇ、シムラ……
雨の日から何日が経ったと思う?
10日よ、10日。
私を気遣うのなら、翌日の午前中に声かけてよ。
苛立ちとくすぐったさが交錯して無表情を貫く。
「あの、…前島さん……」
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