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卒業間近、彼が言った。
「えみ、結婚しよう。もちろん、働きたければ働くのもいいことだし、なにも強制しないから」
その手には、小さな箱。
それを見ただけであたしは中身の重たさを思い、嗚咽をあげながら泣いてしまった。
彼に抱きついて、いつも通りメガネを舐めたあとに気付く。
「…パパに、言ってないから…」
あたしの心にはいつもパパがいる。
大切なパパ。一人であたしを育ててくれたパパ。
彼は笑顔で言う。
「もちろん、あいさつにいこう。その前に、返事が欲しいんだけど…」
はい、と答えながらあたしはまた号泣していた。
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