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「それはお疲れになりましたね。ゆっくりして行ってください」
あたしは笑顔で言う。
冷静に。
心のうちを悟られないように。
そしてギムレットを作る。
疲れてすぐに呑みたいのならば、少し氷を荒くして、香りもアルコールも強めの方がいいかなと思い、少し分量を調節して強めにシェイカーをふる。
どうぞ、そう言ってギムレットを出す。
「ありがとう」
メガネの奥の瞳を見つめてしまう。
素敵な人。
とても、メガネが似合う。
一口目はそっと呑み、そして彼はハイペースであたしの作ったギムレットを飲んだ。
「おいしい。若い女性がシェイカーを持っているのは見ていて華麗ですね」
あたしの選択は間違っていなかったみたいだ。
この人は、カクテルをよく知っている。
「ありがとうございます。あたしがシェイカーをふれるのは、ギムレットだけなんです」
合格が出なくて、そう付け足すと彼は笑った。
あたしも笑った。
「それならば、またギムレットを」
その言葉に心が震えた。
きっと、これはほんものの恋だ。
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