5人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁ、モナコの頭文字のMで彼女が強く願う色の赤」
「ん?」
「彼女の好きな赤色だよ」
全て洗い終わったところだった。コイトスはそれに気づく。
「おっと……洗い終わったか」
私の場所とコイトスは入れ替わった。コイトスは体をそこで犬のように身震いした。そして窓側に行き逆立ちするかのようにしてそこの網戸に張り付いてまた話しかけてくる。三本に分れた尻尾が揺れていて意外とかわいい。
「へえ、そのコインがあるとすごい力が使えるんだ」
「あいつ、説明省いて術発動したな。お仕置きしなくては。口に手を突っ込んで心臓を握り捻ろうかな」
コイトスがよだれを垂らしながら言う。目まで光っていて恐ろしい。
「何震えてるのさ。冗談に決まってるでしょ。ほら、僕の手は短いんだからさ」
コイトスの手を見ると確かに短いから無理である。
「話は戻させてもらうけど君が見たコインはただのその術者の証。君にもその才能はあるんだよ」
「どういうことだ?」
「生命線が無いこと……まぁ、僕らの中ではそれを“無命線”って呼んでる」
「まぁ、“亡命線”って呼ばれるよりはマシか」
「あと僕に会ってコインを受け取ることだな」
「……でお前らは誰と戦うんだ」
「簡単に言ってしまえば能ある犯罪者だね」
「はい?」
「能力のある犯罪者としか言い切れない。まぁ、君が見ることはないかあるか今から言う判断で決まるよ」
私はそう言われたとき黒い浴衣の少女を思い出した。もしかしたら彼女も……。
「コイトス、気になったんだけど黒い浴衣の少女……」
「え?……ゴホゴホゴホゴホ……」
コイトスは動揺したのか、窓縁から落ちお風呂の中に入り込んできた。
「大丈夫か」
また仰向けで目を開けたまま浮かんでいる。
死んだのか?
「……大丈夫。その女の子はどこに行った?」
生きていた。正直言って間際らしい狐だ。人を騙すとはよく聞くが。
「……ここのエレベエーターに俺が乗ったら死角に入って壁の向こうに消えていった。『気を付けて。始まりは終わりを告げるものよ』って言ってたぞ」
「そうか。彼女の名は谷本百合。またの名を王茂子子。コインの色は黒」
最初のコメントを投稿しよう!