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私は率直に聞いてみる。
「何で二つの名前を持ってるの?」
「死んだ際に死名というのをもらってこの世の後悔を償いに来たっていうのが噂である。彼女は僕に協力したら君も狙う予定だよ」
「ふうん。俺狙われるのか」
「こういう話言われたら決められないよね。もし僕の目が汚れていないなら君はすべての事件を無事解決できる才能があるかもしれない。だから……」
私は手相占いで笑われた時に願ったんだ。術が使えるように。それが人を傷つけるのではなく、人を助けるのならやってやろうじゃないか。死のうとした償いのためにも。
「協力してやるよ。お前たちの戦いに……」
「なんで……そんな簡単に」
「気まぐれだからだ。それにこの生命線が無い手で人を救うことができるなら俺を見くびってた奴を驚かせるかもしれないだろ」
「本当に僕と協力していいんだね」
「あぁ」
「左の手のひら出して……」
私の左手にコイトスの柔らかい肉球が触れる。
「彼の共鳴たるコインよ、我が右手の下に現れよ……神判断遊歩道(ゴッドジャッジプロムネイド)!!」
左手に何かが乗っかった。コイトスも自分の手をどける。
「君の色は黄色だね」
「Nか」
「頭文字のNだよ。神の判断によって遊歩道を間違えたら現れないけど君は出た。分かりづらいよね。まぁ、見込んだ通りだよ。ちなみにさっきのは英語読みだよ」
こいつの話を聞きながら風呂桶から出て扉に手をかけたら開いた。話は終わったようだ。
「さて僕もここから出ないとな」
私の股をすり抜けて風呂場の外に出ていた。コイトスは茶色の床の上で一瞬白色に光り出した。見ると毛が乾いていた。
「あ、ごめん。自動光(オートフラッシュ)したら眩しかった?」
「いや、大丈夫」
どうやら、その光は家族に気が付かれずに済んだようである。彼と長い時間話したつもりだったが、五分しか風呂に入っていなかったことになっていた。コイトスが言うには時間を止めていたらしい。また、こいつの存在も家族の者には気が付かないで普段通りに過ごしていた。コイトスは明日学校から帰るまで共にいると言っていたので私と共に布団の中で寝るのであった。話さなければかわいいものだと思いながら。
そして物語の歯車は動き始めるのだった。
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