1章「始まりは終わりを告げる」

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私は彼らの笑いに耐えきれず自分の席に戻り読書を再開した。あと五分もすれば昼休み終了のチャイムが鳴る。そう思っていてもなぜか手を震えながら読書をするのだった。おそらく悔しかったのかもしれない。 その後、彼らから私のこの手相の情報が伝わったのであろう。 「生命線が無いなら死んでんじゃないのか」などという悪口や蔭口を男女学年関係なしに時間が過ぎていく度に言われた。さらに両親にも言われるようになった。私は神社で生まれたから生命線が消えたのではないかとも思うこともあった。そんな風に考える度に自分でいろんな刃物を使って体に傷を付けることがしばしばあった。 相手を傷付けることよりも自分に傷を付けることは簡単だった。心の傷に比べればこんな傷は痛くなかった。まぁ、死ぬのが怖いから脈を外して切っているからかもしれない。だから首を吊ったり高いところから落ちたりなんて考えなかったのかもしれない。たとえ他の人にどう思われてもよかった。しかし次第に自分の行為がむなしかったのか、そういう行為をやめた。さらに彼らのことを気にしない生活を送った。 私がそのようにして三週間くらい経った頃、彼らは悪口や蔭口をやめた。 高校を卒業し大学に入りそして時が流れて大学三年生になった。この頃になると手相の生命線がないという存在を忘れがちでいた。自動販売機の前にいる彼女に会う現在に至るまでは。
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