グリル編

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世の中には誰も知らない世界がある。 深海魚が考えていること。地球ができた初期のこと。ましてや魔王や覇王、天使や悪魔が存在する世界などは想像することでしか語ることができない。 伝説はすでに出来上がり、大半は裏付けされて世界に広まっている。 俺は棚から引き抜いた本を床に投げ付けた。 書斎の棚に集められた本は祖父が旅先で見つけた本だ。 本は床に叩き付けられて動かなくなった。他にも棚から引き出された本が散らかっている。すべて俺が投げつけたんだ。 別に本が嫌いだというわけではない。読み終えたあとの本に興味を失っただけのことだ。 散らかした本の角が当たったて床にいくつも傷がある。本は分厚いものもあれば薄い本もあり、ジャンルもばらばらで推理小説もあれば伝記もある。 書斎の棚は頭の上まで伸びている。今年になって脚立を使いやっと最上段に手が届くようになった。一番上の本は下にあるよりも難しいことが書いてあった。それでも根気よく読み進め、先日、すべての本を読み尽くした。 俺はもう一度読みたい本には出会えなかった。 同じ題名を引き抜いては今日も同じように投げ捨てる。
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