第二章

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 一緒に梛も教育実習生として入ってきて、視線が交わった。その瞬間、梛は軽く大丈夫だというように頷いた。思わず詩子は小さく頷き返して、それが秘密の合図のように思えて少し嬉しくなった。そう思った時点で、なんでもない関係とも言い切れないと詩子は改めて思い直した。  ホームルームに続いて日本史の授業が終わり、女子は梛の元に集まった。どうせプライベートな質問は受付ないだろうと、女子に囲まれずホッとしていた詩子は、もう一つの頭痛の種を思い出した。煉が教室に顔を出したのだ。 「詩子ー」と呼び捨てにする様は、何人かの女子をざわつかせた。  詩子は梛が見ているのに気づきつつ、慌てて廊下に出て煉の背中を叩いた。 「あんま叫ばないでよ、恥ずかしい」 「ねー二時間目遊ぼー。自習とかやってらんねー」  煉の能天気な誘いに詩子は呆れ顔を向けた。 「あのね、こっちのクラスは自習じゃないんだよ」 「いーじゃんいーじゃん、暇なんだよ」 「私まで巻き込まないでよ」 「へー、槙原センセとはサボれてもー?」  にへらと笑いながら痛いところを突いた煉に、思わず詩子は動揺して煉を見た。 「昨日、」と言いかけた煉の口を思わず塞いだ。誰が聞いているか分からない。 「わ、分かったから!」  詩子の言葉に煉がガッツポーズをきめる。そこまでして自分を繋ぎとめようとする煉の意図を読めないまま、詩子は真美に二時間目欠席することを伝えた。  二人がやってきた体育館の裏は校舎などの死角にあり、カップルがよくサボることで生徒たちの間では暗黙の場所だった。ちょうど他のカップルもいず、煉はコンクリートの階段に座ると詩子にポッキーを差し出した。詩子はそれを受けとってかじりながら、スマホをいじっていた。 「なーんかさ、最近、詩子、槙原センセと仲いー感じ?」 「え、別に……」  一瞬スマホをいじる手を止めて、詩子は素早く煉をうかがいみた。煉は素知らぬ風を決め込んでいるのか、空を仰いでポッキーを複数本まとめて食べている。 「でもさーあんま仲よくしない方がよくね?」 「だから仲よくないって言ってるじゃん。決めつけないで」 「なんかゲデヒトニスに出入りしてるみたいだし?」
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