第二章

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「オレも惠も児童養護施設育ちなんだよ。だからどうしてこんな力を持って生まれたのかなんて知らないし、知るつもりもない。ただ自分にしかできない仕事があるってだけで充分恵まれてる」 「すみません……」 「なんで詩子が謝る?」  そう言ったきり、梛は視線を本に落として再び読書に没頭したようだった。  なにげなく言われたものの、内容の大きさに隣にいる梛を改めて意識した。今までぶっきらぼうで愛想もないヤツだと思っていた梛を見直した気分だった。そしてこうして二人で電車に揺られていることが、学校の女子たちには内緒なのだと思うと、なんだか少しだけ今までより梛に近づけた気がして嬉しかった。
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